Tales of Another Story Prologue〜そして私たちは出会った〜
3.ミミーの妹を探せ!
入学してから1週間が過ぎて、リリスたちも学園生活に慣れ始めてきていた。
「えっと・・・・y=2x・・・よってこの式は・・・・・あぁ、もう!わかんない!」
リリスとノーマは放課後、学園のカフェテリアで勉強中。リリスは数学を前に撃沈していた。
「だから、リリっち。この式はこうで・・・・・」
ノーマは丁寧にリリスに数学の問題を教える。
「・・・・・あ、そっか!ノーマは頭がいいねぇ〜」
「まあ、数学はそこそこやってたからね。こ〜れくらいちょろいちょろい♪」
自信満々に言うノーマ。
「私数学苦手なんだよね。はぁ・・・ついていけるかな」
最大の難敵(数学)がここに現れた。リリスは大きく溜め息をつく。
「大丈夫だって、分かんなくなったらあたしが教えてあげるからさっ!まあ、最終手段はカンニングで」
ノーマの頼もしい一言がリリスの心に染みた。最後以外は。
「あ・・・ありがとう、ノーマ」
リリスは「数学苦手」の称号を手に入れた!
勉強を終えたタイミングで、フレイ、アニー、しいながリリスたちのところへやってきた。
「あれ、2人とも勉強中?」
フレイが声を掛けてくる。
「うん、今終わったところ。みんな今から帰り?」
「これから最近できたパン屋に行こうと思ってるんだけど、リリスとノーマも一緒に行かない?」
しいなに誘われ、リリスとノーマは一緒にそのパン屋へ行くことになった。
学園を出て歩くこと10分。“ブレッド・ブレッドのおいしいパン屋さん”とポップ体で書かれている看板がある店の前に着く。
「ここがそのパン屋さんか」
リリスはかわいらしいお店の看板を見上げている。
「じゃあ、さっそく入ってみよ」
ノーマが先導して中に入り、リリスたちも続いて入店する。
店内はパンを焼く匂いで満ち溢れていた。中は音楽が流れ、パンを食べながらおしゃべりをしている学生が目立つ。
「いらっしゃいませだパン!」
女の子の店員―ミミーが元気よく挨拶する。
「ああああああああああああああああああああああああっ!?」
ノーマが大声を上げながら、驚いてミミーを指差した。
「どうかしましたパン?・・・・・ああああああああああああああっ!!」
ミミーも同じリアクションでノーマを指差した。
「ノーマさん、知り合いですか?」
アニーが尋ねると、ノーマはうんと頷く。
「えっと・・・・たしか・・・・そう、“パンの耳”!!」
・・・・・・・・・・・・・・。
沈黙が走る。“パンの耳”と言われても、いまいちよく分からない。
「ち、ちがうパン。小生はパンの耳じゃないパン!ミミー・ブレッドだパン!」
ミミーは怒鳴りながらリリスたちに言った。
(要するに“パンの耳”か・・・・・)
全員、一瞬にして納得する。
「な、なんだかバカにされているような気がするパン・・・」
ミミーはとても複雑な気分になった。
「ま、まあいいじゃん別に!それより、あんたこんなとこで何やってんの?」
「決まってるパン!ワンダーパン職人の技術を広く世界に伝えるためだパン!えっへんパン!参ったパン?」
ミミーは自信満々に大きく胸を張って宣言した。
「す、すごいんですね・・・・」
苦笑いするアニー。
「と、言うわけで・・・・ご注文は何にするパン?当店のオススメは、“ミミー特製めんたいフランス”だパン!」
ミミーはリリスたちを客席へと案内し、メニュー表を渡す。
「じゃあ私、オススメのヤツとオレンジジュース!」
リリスが先にオーダーをする。しいなとアニー、フレイもそれぞれオーダーし、ノーマだけが1人悩んでいた。
「う〜ん・・・・・どうしよう・・・・」
ノーマはメニュー表を見ながら、必死に腕を組んで考えている。
「・・・・・・おっ」
メニュー表を見ていたノーマの目に飛び込んだのは、チョココロネ。
「これが一番オーソドックスな感じでいいかな。じゃあ、チョココロネで!」
ノーマもようやくパンをオーダーする。
「チョコ・・・コロネ・・・・」
ノーマのオーダーを聞いた途端、ミミーの表情が曇った。
「ちょ・・・・ちょっと、どうしちゃったの?もしかして品切れとか?」
変に思ったのか、ミミーの様子を伺うノーマ。
「え?・・・・・な、なんでもないパン!了解だパン!すぐにお持ちするパン!」
ミミーはパッと表情を切り替え、店の厨房へ走っていった。
ガラガラ、ガッシャーン!!!
直後、厨房の奥で何かが落ちる音が店内に響き渡る。
「いだいだパン・・・・・・」
最後に聞こえてきたのは、ミミーの情けない声だった・・・・・・。
「だ、大丈夫かね・・・・・あの子」
しいなが不安そうに呟いた。
そして待つこと5分。ミミーがオーダーしたパンと飲み物を持ってやってくる。
「お待たせしましたパン!めんたいフランスとカレーパンと・・・・・」
ミミーはリリスたちにそれぞれ注文したパンと飲み物を出す。
「わぁ、おいしそ〜」
出来立てのパンを前に、リリスたちは大感激。
「それじゃ、いっただきま〜す!」
まずはリリスが大きく口を開け、ミミー特製めんたいフランスを頬張る。
「ん〜、おいし〜♪」
リリスはめんたいフランスの味にご満悦。
続いてしいな、アニー、フレイも頼んだパンを食べる。3人ともすっかり気に入ったようだ。
「んじゃ、あたしも!あ〜ん・・・」
ノーマもチョココロネを頬張ろうと口を開ける。
・・・・・・・・・・・・。
誰かの視線を感じる。ノーマは頬張るのをやめ、視線の感じる方へと顔を向ける。
「う・・・・・・うぅ・・・・・」
ミミーが涙目でノーマ・・・・というよりチョココロネをじっと名残惜しそうに見つめていた。
「・・・・・な、何?」
視線が気になり、チョココロネが食べられない。
「しょ・・・・小生のことは気にしなくていいパン・・・・うぅ・・・早く食べるパン」
そう言ってミミーは涙を拭った。
「ね、ねぇノーマ・・・・この人どうしちゃったの?」
気になったりリスが尋ねる。
「そんなの、あたしが聞きたいよ」
ノーマは気を取り直して、もう一度チョココロネを口に運ぶ。
・・・・・・・・・・・・。
「う・・・・・・・・・うぅ・・・」
やっぱりミミーの視線が気になる。食べづらい。
「だぁ〜、も〜っ!一体何なのよ!?」
視線が気になり、なかなかチョココロネが食べれず、苛立ちぶつけるノーマ。
「あの、僕達もなんだか気になるんですけど・・・・・・何か、あったんですか?」
フレイも食べるに食べられなかった。フレイだけではなく、しいな、アニー、リリスも気になって食事に集中できない。
すると、ミミーが涙と一緒に出てきた鼻水を啜り、語り始めた。
「うぅ・・・・・ちょっと妹のことを思い出してただけだパン・・・・」
「「「「妹!?」」」」
全員、声を揃える。
「で、でも・・・・それとノーマと、何の関係があるんってんだい?」
と、しいな。
「違うパン。ノーマじゃなくて、そのチョココロネだパン・・・・」
全員、唖然とする。妹とチョココロネのつながりが、よく分からない。
「妹さんが・・・・どうしたの?」
リリスが心配そうに聞く。
「じ、実は・・・・妹が・・・家出していなくなっちゃったんだパン・・・・・ぐすっ」
ミミーの目からぶわっと涙と鼻水が溢れてくる。
「「「「家出!?」」」」
全員、また声を揃える。
「もう家出してから、ずいぶん経ってるパン・・・・・うぅ・・」
ミミーの顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになる。
「と、とりあえず座んなよ。ほら」
しいながミミーを気遣い、空いてる席に座らせた。
「妹さん、チョココロネ好きだったの?」
リリスが尋ねると、ミミーは涙を拭い、うんうんと頷く。
「小生は・・・・・本当は妹を探すためにここへ来たんだパン・・・・」
ミミーはポケットからティッシュを取り出すと、チーンと鼻をかむ。
「ここに、その妹さんがいるんですか?」
「そうパン。でも・・・・・ちっとも見つからないパン」
ミミーは顔を俯かせた。
ミミーの話では、妹を探し出すためにわざわざ店まで構え、ミンツに滞在しているのだという。
妹を思うミミーの気持ちが、痛いほどリリスたちに伝わってきた。
「・・・・・・・・よし!」
何を決心したのか、リリスが立ち上がる。
「ねぇ、みんなで妹さんを探してあげようよ!」
困っている人を見過ごせない性格のリリスは、突然妹探しの提案をし出した。
「さ、探すっていったって・・・・一体どうやって?」
と、フレイ。
「あ・・・・・・えっと・・・・・」
言葉につまるリリス。何も考えてなかったようだ。
「と、とにかく!私、放っておけないの!どうにかして探そうよ!」
探してあげたい、リリスはその思いでいっぱいだった。
「・・・・・そだね、見つけてあげよ!」
ノーマ、しいな、アニー、フレイもOKしてくれた。
「み、みんな・・・・・ありがとパン・・・・」
リリスたちの優しさに感慨したミミーは喜び、また涙と鼻水を溢れさせた。
「んで、妹ってどんな感じの子なの?」
ノーマがチョココロネにかじりつきながら、妹の特徴を聞き出す。
「う・・・・・・・・」
何故だか複雑な顔をするミミー。
「しょ・・・・小生より少し背が低いパン。む、胸は小生より小さいパン。ちなみに髪の毛の色は栗色だパン」
「・・・・・・・本当に?」
怪しい。ノーマが探りの入った目でミミーを見る。
「ほ、ほほ、本当だパン!」
「なんか怪しいなぁ・・・・・まぁいいや。で、その妹の名前は?」
「コロネ・ブレッドだパン。ちなみに弟の名前はコッペで、父親の名前はブレッドだパン」
・・・・・・・・・・・・。
突っ込みどころ満載の家族だということが、よく理解できたリリスたちだった。
寮へと戻る帰り道。空は茜色に染まっていた。
「う〜ん、どうやって探そうかな・・・・・・・・」
リリスは腕を組み、妹のコロネを探す方法を考えていた。
「とりあえず、街をくまなく探してみるとか?」
ノーマが適当に案を出してみる。
「それ、すごくキリがないと思う・・・・」
フレイにあっさり却下された。
「・・・・・・・コロネ・ブレッド」
アニーがコロネの名前を連呼している。何か思い当たる節があるのだろうか。
「・・・・・もしかして」
アニーが突然立ち止まり、何かを思い出したように言葉を呟いた。
「何か、分かったのかい?」
しいなが尋ねると、アニーは頷いた。
「はい。コロネさんって人、私知ってます」
「「「「えぇっ!?」」」」
全員、声を揃える。意外にも、その人物は学園に通っているようだ。
「体育の時間、一緒になったことがあるんです。髪の毛の色も栗色で・・・・確か、名前はコロネでした」
「それだ、きっとその人だよ!・・・そっかぁ、同じ学園の生徒だったんだね」
確信を得たようにリリスは喜ぶ。後は学校内を探すだけとなった。
「なーんか、案外早く見つかりそうだね」
あっけないなと、つまらなそうにノーマは言った。
「まだ本人かどうか分かんないけど、パンの名前の人なんてあんまり聞かないからね・・・・」
しいなの言うことも最もだ。パンの名前をした人なんて、どこの世界を探してもミミーの家族以外存在しないだろう。
「よし!それじゃあ明日、みんなでコロネさんに会いに行こっ!!」
次の日の放課後、リリス、ノーマ、アニー、しいな、フレイの5人は早速コロネのいるクラスの教室へと足を運んだ。
「で、アニちん。コロロンはどの子なの?」
ノーマは教室内を覗き見しながらアニーに尋ねる。既にコロネにもあだ名が決められていた。
「えっと・・・・・・あ、いたっ!コロネさ〜ん!」
アニーが呼びかけると、友達と話していた栗色の髪の女の子が気づいて振り向き、リリスたちに近づいてきた。
「なんだ、アニーじゃない。どうしたの?」
栗色の髪にストレートヘアで、ちょっと大人びた感じの女の子。スカイブルーの瞳が可愛らしい。
ともかく、まずは本人かどうかを確かめなければならない。リリスが話を切り出した。
「えっと、ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「あの、コロネさんの名字って何て言うのかな?」
「へ・・・・名字?」
そんなこと聞いてどうするんだろうか。ちょっと困った顔をするコロネ。
「名字は“ブレッド”だけど?」
予感的中。間違いなくミミーの妹だ。確信を得たリリスはさらに尋ねてみる。
「お姉さん、いるよね?」
姉という単語を聞いた途端、コロネの表情が少し険しくなる。
「・・・・・・お姉ちゃんを知ってるの?」
リリスたちはミミーがこの街でパン屋を営みながらコロネを探していることを説明した。
「・・・・・・・・・・・・・」
コロネはしばらく黙ったまま、腕を組み床に視線を注いでいた。
しばらくして、ようやくコロネが口を開く。
「・・・・・行くわ。あそこのパン屋でしょ?場所なら知ってるから」
コロネは至って冷静だった。場所を知っているなら話は早い。リリスたちはコロネを連れて、ミミーのパン屋へと向かった。
店に着くと“準備中”の看板が立てられていたが、コロネは気にせず店内へと入っていく。リリスたちもその後を追う。
「あ、まだ準備中だパン!・・・・・・・・あっ」
ミミーはパンの仕込みの最中だったが、コロネと目が合い、動きが止まる。
「コ、コロネ・・・・・」
妹との再会。ミミーは妹の名前を口に出すのがやっとだった。
「私たち、邪魔みたいだから出よっか」
リリスたちはそっと、店内から出ようと背を向ける。
「コロネ!小生はずっと探して―――――」
「何しに来たのよ!さっさと国へ帰れ、このバカ姉貴!」
コロネの罵声が、客のいない店内に響き渡る。
「「「ええぇぇぇぇーーーー!?」」」」
予想外の展開。感動の再会が、一瞬にして修羅場と化した瞬間だった。
「ちょっと、ここは普通“お姉ちゃん、私のために探しにきてくれたのね〜!”とか言って泣きつくのがお約束でしょ!?」
ノーマが勝手な妄想を展開する。
「こ、コロネ!今すぐお父さんのところへ戻るパン!」
コロネの勢いに圧倒されていたミミーだったが、負けじと言い分をぶつける。
「冗談じゃないわ!私はパン職人になんかぜっっっっっっったいにならないからね!」
「何を言ってるパン!小生たち兄妹はワンダーパン職人となって、その技術を世界に伝えなきゃならないんだパン!」
「んなもんコッペ兄さんとあんた2人でやりゃいいでしょ!?私を巻き込まないでよ!」
2人の骨肉の言い争いを前に、リリスたちは困惑していた。
「な、何がどうなってるの!?感動の再会は!?」
感動の再会のはずが姉妹ゲンカが勃発。もう止めるに止められない状態にあった。
「コロネ!お姉ちゃんの言うことが聞けないのかパン!」
「もうあんたを姉だとは思わないわ!」
いがみ合いを続けるブレッド姉妹。
「とりあえず2人とも落ち着いて・・・・んぐっ!?」
フレイが割って2人の仲裁に入った瞬間、ミミーとコロネの目が光り、売れ残ったパンをフレイの口の中に押し込んだ。
「黙っててっ!!」 「黙ってろパンっ!!」
フレイはあっさり撃沈し、目を回しながら床に倒れこむ。
このままだとガチバトルに発展しかねないので、全員で姉妹を説得し、どうにかこの場を収めた。
「・・・・とにかく、私はここを離れるつもりも、学校を辞めるつもりもないから。だからさっさと帰ってよね!」
コロネはきっぱりと断言して、父親の元へ戻ることを拒否した。
「小生だって、コロネを連れ戻すまでは帰らないパン!」
ミミーも断固として引き下がるつもりはないらしい。
「じゃあ・・・・・どうしても帰らないって言うなら、私と勝負しない?」
コロネが勝負を持ち掛けてきた。
「私が勝ったら、あんたはあきらめて街を出ていくってのはどう?」
「の・・・・望むところだパン!じゃあコロネが負けたら、おとなしくお父さんのところに戻ってもらうパン!」
2人は睨み合いを続け、火花を散らしている。
「ちょ、ちょっとコロネさん!勝負なんてやめたほうが・・・・」
見兼ねたアニーがやめるよう止めに入る。
「平気平気、別に殴り合いとかするわけじゃないし。それに、勝つのは絶対私だから!」
コロネは自信満々に言って、勝利の宣言。
「そんなこと言ってられるのも今のうちパン!お姉ちゃんの方が強いパン!」
姉の威厳を示してやろうと、ミミーもすぐに言い返した。
「な、なんかすごいことになってきたね・・・・」
ここまで進展すると、もはやどうにもならない。リリスは苦笑いするしかなかった。
「ねぇ、今日体育館開いてたよね?」
コロネはやる気満々で、体育館が開いているかリリスたちに尋ねる。
「体育館?確か開いてたけど・・・・なんで?」
「バスケ勝負でケリをつけるわ!」
コロネはやる気満々、勝つ気も満々だった。
「・・・・・・・いつの間にか勝負事になっちゃったね〜」
と、ノーマ。ここまで進展してしまった以上、もう止めることなどできない。
「・・・と、とりあえず体育館行こっか」
リリスたちは姉妹対決を見届けるため、学園の体育館へと向かうのだった。
「――――――そろそろ準備はいい?」
ドリブルしながらコロネがミミーに尋ねる。服装はTシャツに短パン。長い髪を無造作に後ろへ束ねている。
「いつでも来いパンっ!」
ミミーは準備万端のようだ。
一方、リリスたちは姉妹の様子を近くで見ていた。
「コロロン気合入ってるね。もぐもぐ・・・・」
ノーマはのんきにポップコーンを食べながら観戦していた。リリス、アニーは心配そうに2人を見守っている。
「・・・・・・・・・・・」
その中でフレイはただぼーっと、コロネの姿に視線を注いでいる。
「フレイ。どうしたのさ、ぼーっとして」
しいなに声を掛けられて、ようやくフレイは我に返った。
「あ・・・・え、僕?」
「さっきからコロネのことじーっと見てたからさ。惚れたのかい?」
からかい混じりのしいなの言葉に、フレイは赤面しながら首を横に振る。
「ち、違うよ!ただ、その・・・・いいなって思って」
「いいって、何がだい?」
フレイが説明しようとした矢先、ポップコーンを食べ終えたノーマが会話に割り込んできた。
「きっとあの格好に惚れたんだよ。実はフレれん、ああいうのに趣味があって・・・・何ていうの?体操服フェチみたいな?」
えっ・・・・と、リリスたちの視線がフレイに集まる。
「・・・・フレイが、そんな趣味してたなんて」
ショックだったようで、リリスが軽蔑のまなざしをフレイに向ける。
「あんた・・・・変わってるねぇ」
しいなも複雑な表情を浮かべ、フレイに冷めた視線を送る。
「変わった趣味・・・してるんですね、フレイさん」
アニーの視線が遠い。
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ、僕そんな趣味してないよっ!」
誤解を解こうと弁解しても、もはや手遅れ。ノーマはその中でくすくすと含み笑いをしていた。
フレイは「体操服フェチ」の称号を手に入れた!
(僕はただ、あの子の履いてるスニーカーのデザインが格好いいなって思っただけなのに・・・・・・)
そんな事をしてる間に、コロネが勝負の説明をし始めた。
「ルールは簡単。私から10分以内にこのボールを取ればいい」
あまりにも簡潔な条件だった。
「なっ・・・バカにしてるのかパン!?そんなの、3分あれば十分だパン!」
ミミーは唾を飛ばしながら怒鳴りつけ、服の袖を捲り上げる。
「へぇ〜、じゃあ取ってみなさいよ。取れるものならね」
コロネに挑発され、ミミーは飛び掛るようにボールを奪おうと走る。
・・・・・・・が、あっさりかわされた。ミミーは何度もボールを取ろうとするが、全く奪えない。
「はぁ・・・はぁ・・・・なかなかやるパン・・・・」
ミミーは汗をダラダラとかき、ぜぇ、ぜぇと息を切らしている。
「・・・・後1分しかないけど、まだ続けるの?なんなら延長してあげてもいいけど」
コロネは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「あ・・・・・・当たり前だパン!」
そして制限時間が経過。
結果、時間を延長してもらった上、ボールを奪うところか触れることすら出来なかった。
「すごい・・・ミミーさん、手も足も出なかった」
コロネの華麗なるボール捌きに、思わず感激するリリス。
「う・・・・・づがれだパン・・・・」
ミミーはバテてしまって、床に突っ伏している。
「・・・・・あぁ、そうそう。言い忘れてたけど、私バスケは得意分野だから」
コロネがとどめを刺すようにミミーに言った。始めから、コロネに有利な勝負だったのだ。
「そ・・・・・それを早く言って欲しかったパン・・・・」
コロネは「バスケットガール」の称号を手に入れた!
「確認しなかったあんたが悪いんでしょ?さあ。約束通り、この街から出てってもらうからね」
コロネはボールを人差し指でくるくる回しながら、ミミーに告げる。
「き、今日はこのぐらいにしといてやるパン!覚えとけパン!」
ミミーはよろよろと立ち上がり、見苦しい捨て台詞を言って走り去っていった。
「あ、ちょっとミミーさん!・・・・行っちゃった」
リリスは声をかけるも、もうミミーの耳には届いていなかった。
「・・・・・・・ふぅ」
勝負を終えたコロネは軽く溜め息をつき、ボールを置いてリリスたちに近づてくる。
「ごめんね、なんか面倒なことに付き合わせちゃって」
「わ、私たちはいいけど・・・・・本当にこれでいいの?」
「いいの。もう、むこうに戻る気はないから」
「で・・・でも、お父さんや弟さんもきっと心配してると思うよ。やっぱりミミーさんと戻ったほうがいいよ」
リリスが心配してコロネを説得を始めると、コロネは嫌悪感をむき出しにして、言い放った。
「あ〜あ、いいわよね。優等生はお気楽で」
「え・・・・」
「あんたたちは学費のこととか、心配しなくていいからそんなことが言えるのよ」
「そ、そんなことないよ!ただ私は・・・・」
そんなリリスの態度が偽善者っぽく見えたのか、次第に苛立ってきたコロネはリリスを睨みつけた。
「人の事情も知らないくせに、勝手なこと言わないで!何よ、優等生ぶって・・・あんたみたいなのが一番ムカつくのよ!」
コロネはそう言ってリリスを怒鳴りつけた。リリスは、何も言い返せなかった。
「ちょっと!こっちは心配して言ってんのにその言い方はないでしょ!?」
さすがのノーマも反論するが、コロネは無視した。
「・・・・・・ふん」
コロネは何も言わず、背を向けて体育館から出ていった。
「なんだい、感じ悪いねぇ!」
しいなが口を尖らせる。確かに、あの言い方は酷い。
「・・・・・・・・・・・・・・」
リリスはショックを隠せず、黙ったまま俯いていた。学園に来て、初めて親切を拒絶されたのだから。
「リリっち、あんなの気にすることないよ!帰ろ帰ろ!」
ノーマがそんなリリスを気遣ってくれる。
「あ・・・・・・うん」
リリスは気が晴れないまま、ノーマたちと体育館を後にした。
コロネは道草をしながら、人通りのない薄暗い道をとぼとぼ歩いていた。
「ああ、もう。何よあれ!ホントムカつくわ、ああいうヤツ!!」
誰かに言うわけでもなく、リリスに対する愚痴を何度も吐き出すコロネ。
「優等生だからって、調子に乗ってるんじゃないわよ!ああ、ムカつく!ムカつく!ムカつく!!」
溜め込んだストレスを全部ぶちまける。疲れたのか、コロネは大きく溜め息をついた。
「・・・・・・・・・・・・」
ふと、あの時のリリスの悲しそうな表情が浮かぶ。
(・・・・ちょっと、言い過ぎたかな)
さっきリリスに言った言葉が気にかかり、コロネは少しだけ後悔していた。
(・・・・・・謝っても、今更遅いよね)
今更謝ったところで、許してくれるとは思えない。コロネはまた大きく溜め息をつく。
―――――――――――――。
しばらく歩いていると、背後から嫌な気配を感じ取った。
(・・・・・・・・何?)
コロネは立ち止まってパッと後ろを振り向く。そこには誰もいなかった。
「気のせい・・・・か」
コロネは再び前を向いて再び歩き出した。
―――――――――――――。
だが、歩いても歩いても、その気配は消えることはない。
「・・・・だ、誰なの?」
コロネはもう一度後ろを振り向くが・・・・・・やっぱり誰もいない。
(・・・何・・・・何なのよっ!)
怖くなって、その気配を振り切るかのように走り出した。それでも気配は消えず、振り切ろうと無我夢中で走り続ける。
気がつけば、街の外へ出てしまっていた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・ここまで・・・くれば・・・・」
気配はいつの間にか消えていた。コロネはホッと胸を撫で下ろし、疲れ果て、何かに凭れ掛かる。
ふさっ。
まるで毛皮のような感触。
「・・・・・・・・へ?」
何か違和感を感じる。こんなところに毛皮が・・・・明らかにおかしい。
コロネはその“何か”から離れ、恐る恐る肉眼で確認する。
「グルルルルルルル・・・・」
コロネが見たものは、唸り声をあげたエッグベアの姿だった。
「い・・・・・・・」
コロネの顔色が一気に青ざめる。それに気づいたかのように、エッグベアはグオォォォォォォ、と雄叫びをあげた。
「いやああああああああああああああああっ!!」
コロネは絶叫し、恐怖のあまり腰を抜かしてしまった。
「グオォォォ・・・・・」
エッグベアは鋭い目つきで、涎を垂らしながらコロネを睨んでいる。
「・・・な、なんでこんなとこに・・・」
そういえば、走っている最中に“この先、エッグベア出没。絶対に近づかないこと”と書かれた看板があったのを見た気がする。
だが、今更そんな事を思い出してもどうにもならない。
「・・・・・こ、来ないで!私に何かしたら、ただじゃおかないわよ!」
コロネは強気な態度を見せるが、冷や汗をかき、足はガクガクと震えてしまっていた。
「グオォォォオオオオオオオオ!!!!」
エッグベアは鋭い爪の生えた大きな手を振り上げる。
「・・・・わ、私なんか食べたって美味しくないわよ!美味しくないんだから!」
命乞いをしても、当然魔物相手に通じるはずがない。
(誰か・・・助けて・・・・お姉ちゃんっ!)
殺される・・・・そう思った時だった。
「コロネぇぇぇぇぇ!!」
聞き覚えのある声が聞こえてくる。声の主はミミーだった。ミミーはコロネの前に立ち、エッグベアに立ち塞がる。
「コロネには指一本触れさせないパン!」
「お・・・・お姉ちゃん・・・」
「コロネ、お姉ちゃんが来たからにはもう安心だパン!」
ミミーは背中にしょったフランスパンを取り出して、エッグベアと対峙する。
・・・・・・・・・・・・・・。
エッグベアにフランスパンで立ち向かおうとしているミミー。コロネは目を疑った。
「・・・・ちょ、ちょっとそれ武器じゃ――――――」
「くらうがいいパン!パン破斬っ!!」
ミミーはエッグベアに渾身の一撃をお見舞いするが、エッグベアにダメージを与えた様子は全くなかった。
バリ、バリ・・・・・・。
エッグベアはフランスパンの一部を食いちぎり、バリバリと噛み砕いている。ミミーのフランスパンはもう使い物にならない。
「食べられちゃったパン」
「当たり前でしょ!!フランスパンで戦うバカがどこにいるのよ!」
「グオォォォオオオオオオオオ!!!!」
エッグベアの叫び声がミミーたちの背筋を凍りつかせた。もはや絶体絶命。
(もう・・・・・ダメ・・・!)
コロネはぐっと目を閉じた。
「―――――雷神拳っ!!」
突然、閃光とともに雷撃がエッグベアを直撃した。エッグベアは怯み、地面に倒れる。
「・・・・・・え?」
コロネは瞑っていた目を開ける。そこにはリリス、ノーマ、フレイ、しいな、アニーの姿があった。
「グオォォォオオオオオオオオアアア!?」
怯んでいたエッグベアが立ち上がり、リリス目掛けて突っ込んでくる。
「続けていくよ!召雷葬符っ!」
続けてしいなの追撃。素早い身のこなしでエッグベアに札を投げつけ、さらに電撃で追撃する!
「聖なる刻印を刻め―――――」
「狂乱せし地霊の宴よ―――――」
さらにノーマとフレイが同時に術を発動させる!
「――――――エクレールラルムっ!!」
「―――――――ロックブレイクっ!!」
地面から鋭利な岩の槍と光り輝く十字の刻印が出現し、エッグベアにとどめの一撃を加える!
「グオォォアァァァ・・・・」
エッグベアは断末魔の叫びを上げて倒れ、そのまま動かなくなった。
「口ほどにもないパン」
ミミーは自分が倒したかのように、勝利のポーズ。
「いや、あんた何もしてないから」
透かさずノーマの鋭いツッコミ。
「あ、そんなことより・・・・2人とも、怪我はない?」
リリスたちがコロネに駆け寄る。
「あ、あんたたち・・・」
コロネはゆっくりと立ち上がり、制服についた汚れをぽんぽんと払う。
「ど・・・どうして・・・・」
「あの後、やっぱり気になって探したの。そしたらミミーさんがこっそりコロネさんの後をつけてたから、それで・・・・」
と、リリスは説明する。さっきの背後の気配の正体は、ミミーだったようだ。
「・・・・・あ・・あの・・・・さっきは―――――」
「グオォォォオオオオオオオオ!!!!!」
次の瞬間、倒したはずのエッグベアが起き上がり、リリスたちに反撃しようと飛び掛った!
「う、うそぉ!?まだ生きてるし〜!!」
慌てふためくノーマ。予想外の反撃に、リリスたちは対応できない。しかしその刹那、
「―――――――しつこいヤツは嫌われるぞ」
それがフレイの声だとリリスたちが気付いた頃には、エッグベアはフレイの魔術で頭を貫かれ、完全に息絶えていた。
――――――ほんの僅かで、一瞬の出来事。何が起きたのかリリスたちは理解できなかった。
「コイツ・・・・嫌な臭いがする。普通の魔物じゃないな」
フレイはエッグベアの死骸に近付き、つまらなそうにそれを眺めている。
明らかに、いつものフレイと口調が違う。目つきは鋭く、表情は強気で、どこか気高さを感じる。
まるで性格が変わってしまったようで、リリスは豹変したフィアネスを思い出した。
「えっと・・・フレイ、だよね?」
恐る恐る、リリスがフレイに声を掛ける。するとフレイは視線だけをリリスに向ける。
「何だ、オレが魔物にでも見えるか?」
一人称が“オレ”に変わっている。全員、フレイの変わり様に驚いていた。
「それよりお前、平気か?」
視線をコロネに向けるフレイ。コロネは何故だか一瞬だけ言葉に詰まったが、うんと頷いてみせた。
「あ・・・・みんな。その・・・・さっきは・・・・」
“さっきはごめん”。コロネはなかなかその一言を言うことができずにいた。
「話はアニーから色々と聞いたよ。ごめんね、勝手なことばかり言って・・・・・」
リリスが申し訳なさそうに、コロネに言った。何も知らずに、親切を一方的に押し付けてしまったのだから。
「・・・・・・・な、何よ」
コロネは今にも泣き出しそうな顔でリリスを見る。
「・・・・え?」
「謝るのは私のほうなのに・・・・そんなふうに謝られたら、私・・・どうしたらいいか分かんないじゃない」
コロネは泣き出してしまう直前、フレイが前に立ち塞がった。
「じゃあ早速だけど、お礼にキスでもしてもらおうかな」
「・・・・・・は、はい?」
コロネの両肩を掴み、顔を近づけるするフレイ。コロネは急に顔が赤くなり、言葉が出てこなくなる。
積極的なフレイの言動にリリスたちは不意を食らったのか、赤面していて何もできない。
・・・・いつまでそうしていたのだろう。するとフレイはふっ、声を漏らして、
「・・・・・・冗談に決まってるだろ」
まるで飽きたかのように、コロネを突き放す。コロネはしばらく放心状態だった。
「あ、あんた・・・・意外と大胆なことするんだねぇ」
フレイと目を合わそうとせず、少し控えめな態度でしいなが尋ねる。
しかし、さっきの変貌したフレイはどこにもなく、元のフレイに戻っていた。
「えっ・・・・ぼ、僕・・・・・」
鋭い目つきも、強気な表情も、気高さもなく、いつものフレイの表情がそこにあった。
「もしかして・・・・覚えて、ない?」
フレイに尋ねるリリス。フィアネスとの一件が脳裏をよぎる。しかし、フレイから返ってきた言葉は意外だった。
「うる覚えだけど・・・・僕、コロネさんにキスを、迫った・・・・?」
赤面してリリスから視線を逸らす。少しだけだが覚えてはいるらしい。リリスはホッと胸を撫で下ろす。
「・・・・さ、コロネ。もう暗くなってきたし、寮へ戻るパン」
ミミーがコロネの肩を優しく叩く。コロネはうっすらと浮かべた涙を拭い、改めてリリスたちの方を見る。
「さ、さっきは、その・・・・助けてくれて、ありがと」
照れくさそうに、リリスたちにお礼を言った。
「あはは、コロロンが照れてる〜」
ノーマがからかうように笑い出す。
「べ、別に照れてなんかないわよ!て、照れてなんかないんだからっ!」
慌てて照れを隠そうとするコロネだが、バレバレにも程がある。
「コロネ、もう少し素直になるといいパン」
そして、ミミーからダメだしを食らってしまった。
「なっ・・・!?あんたには言われたかないわよバカ姉貴っ!」
コロネは顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。
「あははっ!何だかんだ言って、結構仲いいじゃない」
リリスが2人を見て笑う。それにつられてノーマたちも笑い出した。
「ち、違うから・・・・さ、早く帰ろっ!」
こうしてリリスたちはコロネと仲直りし、寮へと戻っていった。
―――――寮の談話室にて。
リリスは大きなソファに座り、ココアを飲みながら一息ついていた。もう夜中の12時をまわっている。
しばらく寛いでいると、談話室にコロネが入ってきた。
「あ、コロネさん」
「あ・・・・その・・・まだ起きてたんだ」
リリスに言ったことがまだ気になっているのだろうか、コロネは少し気まずそうな顔をしている。
「・・・・・なんか眠れなくて」
まだ寮で寝ることに慣れてないんだ、とリリスは苦笑いする。
「隣、座っていいかな?」
「え?うん、もちろん」
コロネはリリスの隣に腰掛ける。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
互いに何を話したらいいのか分からず、しばらく沈黙が続いた。
「・・・・・あ、あのさ」
最初に沈黙を破ったのはコロネだった。
「お姉ちゃん、電話で私のことお父さんに相談してくれたの。そしたら、お姉ちゃんと同じパン屋でバイトするって条件で、OKしてくれた」
「そっか。そういえば学費、コロネさんのお母さんが出してくれてるんだよね。それなのに私・・・・本当にごめん」
コロネのことはアニーから聞いていた。学費の事も、家を飛び出した事も。
「き、気にしないで。それと・・・私のことは呼び捨てでいいから」
コロネは少し恥ずかしそうに言って笑った。
「じゃあ・・・・コロネ、どうして家出なんかしたの?」
なんとなく、理由が知りたかった。するとコロネは軽く息を整えてから話し始める。
「幼い頃に両親が離婚して、お母さんが家を出て行ったの。私お母さんっ子だったから、パン職人の修行を抜け出して、ここに来たってわけ」
コロネはパン職人の修行に嫌気がさし、家を飛び出して母親の住んでいるミンツへとやってきたのだという。
「ここへ始めて来た時、お母さんがどこにいるのか分かんなくて・・・・・もう諦めようかなと思ってたら、たまたま通りかかったお母さんが声を掛けてくれたの」
あの時偶然会えてなかったら渋々家に戻ってたかな、とコロネは苦笑いした。
「それからお母さんと暮らすようになって・・・・学園に通い始めたのは、つい最近のことなの。だから・・・・」
コロネはリリスの正面を向き、伝えたかった気持ちを言葉にする。
「だから、リリスたちとは仲良くやっていきたい!さっきは、酷いこと言ったりしてごめん!わ、私・・・・私・・・」
唇は震え、今にも泣き出してしまいなコロネ。リリスはそっと肩を叩く。
「・・・・・私たちもおんなじ気持ちだよ。これからもよろしくね、コロネ!」
リリスはコロネの肩に頭を寄せる。暖かい、リリスの気持ちがそこから伝わってくる気がした。
「う・・・・うん!」
コロネにも少しずつ、笑顔が戻っていく。
「それじゃもう遅いし、そろそろ寝よ」
リリスとコロネはまた明日ねと挨拶を交わし、自分の部屋へと戻っていく。こうして夜は更けていった―――――。
次の日、リリスたちは再びパン屋を訪れた。
「いらっしゃいませだパン!」
「いらっしゃいませっ!」
そこにはミミーと、コロネの働く姿があった。
「コロネさんの服、ミミーさんとお揃いですね。とっても似合ってますよ」
2人の衣装を褒めたたえるアニー。コロネの服はミミーと同じ、パン屋仕様の白いベストだ。
「ありがと!お姉ちゃんのお古を着ようと思ったら、胸のサイズがきつくて・・・・」
コロネは小馬鹿にするようにくすくす笑い、ミミーにわざと聞こえるように言った。
コロネは「パン屋アルバイター」の称号を手に入れた!
「そ〜言えば、コロロンの特徴を教えてもらった時、自分より胸が小さいとか言ってなかったっけぇ?」
あれは嘘だったの?と、ノーマがミミーに尋問を始める。
「う・・・・あ。ご、ご注文は何にするパン?」
ノーマの質問を無視し、ミミーは愛想笑いをして誤魔化したのだった。
「それじゃあ私、いつものミミー特製めんたいフランスで!」
この前食べたパンが気に入ったのか、リリスはオススメのパンをオーダーする。
「かしこまりましたパン!」
「かしこまりました!」
ミミーとコロネは元気よく、笑顔で答えてくれた。
こうして学園生活始めてのハプニングは終わった。けれどまだまだ始まったばかり。
これから続く学園生活の中で、一体何が起こるのだろう・・・・リリスたちの期待はどんどん膨らむばかりだった。
☆おまけスキット☆
1:フレイの豹変
ノーマ:「そういやあん時のフレれん、大胆だったよね〜。キスなんか迫っちゃってさ」
アニー:「私も、びっくりしました。あんなフレイさん見たの、初めてです」
しいな:「まるでゼロスを見ているみたいだったよ」
リリス:「何だったんだろうね・・・・あれ。まるで別人みたいだった」
しいな:「気が付いたら、すっかり元に戻っちゃってさ。しかもキスはうる覚えだってね」
アニー:「も、もしかして・・・・多重人格障害じゃ!?」
フレイ:「何か勝手なこと言ってるみたいけど、僕は病気じゃないよ」
4人:「「「「うわーーーーー!!でたあああああああああああああああ!!」」」」
フレイ:「ひ、酷い・・・人をお化けみたいに・・・」
ノーマ:「あー、いやぁ・・・その・・・・いるとは思わなかったんで」
フレイ:「・・・・・・・・・」
アニー:「昨日のフレイさんの事を話してたんですよ。急に口調が変わって・・・・・あれ、一体何なんですか?」
フレイ:「・・・・あれは、えっと・・・そう、気分だったんだ。演技みたいなものだよ」
しいな:「演技?」
フレイ:「うん。その、僕だって格好つけたい時くらいはあるよ・・・だから、別に病気とかじゃないから」
アニー:「そうだったんですか。病気じゃなくてよかったです・・・・心配したんですよ?」
フレイ:「あ、ありがとう。ごめんね、心配かけて」
ノーマ:「ちぇっ、つまんないの〜」
しいな:「そういや、あんたも一応男だったね。なんか女々しいとことか多いから、つい女だと思っちゃってさ」
フレイ:(僕、今まで男として見られてなかったんだ・・・・)
ノーマ:「あ、そろそろ授業始まるから教室戻ろ〜」
アニー:「そうですね、戻りましょう」
しいな:「あっ、待っとくれよ2人とも〜」
リリス:「・・・・・・・・・・・・・」
フレイ:「・・・・・・・・・・・・・」
リリス:「・・・・・・ねぇ、フレイ」
フレイ:「え・・・あ、何?」
リリス:「いつか本当の事、話してくれると嬉しいな」
フレイ:「・・・・・・・っ!?な、何を・・・」
リリス:「・・・・何でもない。さ、早く教室戻ろ。フレイ」
フレイ:「あ・・・・うん」
フレイ:(本当の事・・・・・・か)
2:エッグベアその後
フィアネス:「ねぇ、あなたたち。街の外でエッグベア騒ぎがあったの・・・何か知ってる?」
リリス:「あっ」
ノーマ:「うっ」
アニー:「な、何かあったんですか・・・・?」
フィアネス:「実はあのエッグベア、あまりにも強暴だから賞金がかかってたらしいの。なんでも、退治した方には10万ガルドだとか・・・・」
3人:「「「じゅ、10万ガルド!?」」」」
フィアネス:「えぇ。発見された時にはすでに死んでいて、発見した街の住人が賞金をもらったみたいなのよ。でも一体誰が退治したのかしらね?」
ノーマ:「あ・・・あはは・・・・」
フィアネス:「あ、そろそろ会議に行かないと。それじゃ、また授業でね」
アニー:「・・・・・・・・・賞金、10万ガルド」
リリス:「・・・・・倒したのは私たちなのに」
ノーマ:「10万・・・・・あたしたちの賞金が・・・・・」
3人:「「「・・・・・・・・・・はぁ」」」
3:ありえないっ!!
コロネ:「・・・・・・・・・・・あぁ、もうっ!!」
アニー:「わっ!?びっくりした。ど、どうしたんですかコロネさん。急に大声出したりして・・・・」
コロネ:「どうしたもこうしたも、うちのバカ姉貴のことよ!」
アニー:「またケンカですか?」
コロネ:「聞いてよ!お姉ちゃん、私が作った朝食のオムライスをパンに挟んで食べたのよ!」
アニー:「えっ!?お、オムライスをですか?」
コロネ:「そう!しかも理由を聞いたら“小生の主食はパンだけだパン”って言ったの!つまりお姉ちゃんにとって私のオムライスは単なる“具”にしかすぎなかったのよ!プライドが傷ついたわ!」
アニー:「それでさっきから不機嫌だったんですね」
コロネ:「きっとあのバカ姉貴、脳みそもパンでできてるのよ!あ〜思い出しただけでイライラする!」
アニー:「ま、まあまあ・・・・あっ!それよりコロネさん、そろそろお昼にしません?嫌なことは食べて忘れちゃいましょう」
コロネ:「・・・・そうね、そうするわ。それに今日のお昼は私の特製だし」
アニー:「特製、ですか?」
コロネ:「見せてあげるわ、コレが私の特製!コッペパンに板チョコ、ポッキー、カスタード、ホイップクリームを挟んだ一品!名づけて“コロネデコレーションサンド”、略して“コロデコサンド”!」
アニー:「・・・・・・ミミーさんと変わらないじゃないですか」
コロネ:「え?今何か言った?」
アニー:「い、いえ、何でもありません・・・・」
コロネ:「・・・・・?」
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